予備校講師のつぶやき 〜教育改革がいきる力を育む〜

地方在住の予備校講師(英・国・小論文) STARWARSが何より好き (SNOOPY、チェブラーシカは別格扱い)

予備校・塾の存在意義

数年前、東京都教育委員会が、都立高校に大手予備校の講師を呼び、教育内容の改善指導を依頼すると報道がありました。また、佐賀県のある市が、民間の予備校と連携して「官民一体型」の小学校を開設するという報道もありました。

予備校・塾は、一般的に「補習型」と「受験特化型」の二つのタイプに分かれます。「補習型」が、各高校の進度に合わせて、定期テストの対策をメインとします。また、「受験特化型」は、大学合格を目標としたカリキュラムを編成しています。もちろん、その両方をバランス良く組み合わせることも可能ですが、実質的に、上記のいずれかに偏っているのが現状です。(僕の在籍する予備校は、「受験特化型」に属します)

 

その二つのタイプの違いを端的にまとめれば、「補習型=短期目標」「受験特化型=中長期目標」にあると思います。「短期目標」としての定期テストの点数が良ければ、保護者は安心し、また、推薦入試にも有利と映るでしょう。また、「中長期目標」としての大学入試を常に意識することは、より高い目標を目指すことによる保護者・生徒の動機付けとしてうまく機能するでしょう。

 

しかし、保護者・生徒の求める本当の理想は、

定期テスト」の成績も良く、「大学入試」も志望校に合格する

ということだと思います。ただ、それが可能な生徒の割合は、僕の実感で、進学校に通う生徒のうち、おそらく3〜5%程度だと思います。

 

2020年から本格導入予定の「教育改革」、ドラスティックな変化がいくつかある中で、特に「英語教育」における「外部試験の導入(TOEFL・IELTS・TEAPなど)」が一番目を引きます。いわゆる「4技能(読む・書く・聞く・話す)」の習得を中心とした英語習得のスキームに則り、小学校段階から養成した(はず)のツールとしての英語力を大学入試に取り入れ、国際社会の中での「人材競争力」を上げる取り組みです。

 

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外部試験(英語)の換算得点(予定)

 

 

僕は、この趣旨に諸手を挙げて賛成なのですが、実際、教育現場からは反対意見も挙がっています。なぜならば、今までの「短期目標=定期テスト」「中長期目標=大学入試」をベースとしたカリキュラムでは新大学入試には決して対応できず、また、指導する側の教員も、「4技能」を教えるレベルに身につけている人は少ないからに他なりません。

ただ、これはまた同時に、「塾・予備校」も同じことが言えるわけで、アナクロ的思考、いわば、保守的思考の経営者は、おそらく迅速に対応できずに困惑することになると思います。しかし、上で述べたように、教育の“主力"が予備校・塾になりつつのも事実です。(実際、入試問題作成を予備校に委託する大学も多く存在します)

 

 僕の在住する地方は、全国的にも際立った「公立重視・優位」です。私立高校自体が少ない上に、いわゆる「勢い」のある教育を行っている高校もなく、また、非常に「保守的」な県民性でもあるので、おそらく、あと4年間の移行時期に充実した準備・対応が図れず、「ガラパゴス」化するのではないかと危惧しています。

せめて、僕の講義・授業を受講している生徒たちには、短期・中長期を超えた「今後の社会で生きる力」そのものを身につけてもらうため、英語だけでない「教育改革」が意味する今後のビジョンを示して、実のある学力、いわば、「生きる力」を身につけてもらえるような講義・啓蒙活動をこれからも続けていきます。