"チャールズ・チャップリン (Charles Chaplin)" 「喜劇王」の真実
中学時代、反抗期の真っ只中、田舎者の僕にとっての「かっこいい」はヤンキー風スタイルでした。短ランやボンタンに憧れ、遠路はるばる街中までその系統の制服が売ってある店をふらふら(お金もないのに)さまよい、時には、同じような格好をして、無駄に目つきの悪い(笑)連中ばかりが、同じ映画館に吸い込まれていく。上映中の作品は
『Beebop High School(ビーバップ ハイスクール」』。。。
そんな時代、実は、「スクリーン」や「 ロードショー 」を愛読する映画小僧でした。でも、街中から離れた郊外に住んでおり小遣いもほとんどなかったので、近くのレンタルビデオ屋(レンタル1本が800〜1000円していた記憶があります)で、親に頼んで借りてもらう日々、それらの雑誌には、時折「映画名作リスト」みたいなものもあったので、まず、ビギナーの僕は、そこから抑えようとしましまた。
『The kid』では、放浪紳士チャーリーと捨て子とのにじみ出るような愛を描き、『街の灯』では、盲目の少女とチャーリーとの魂の交流を描きました。
彼自身、幼くして両親が離婚し、母は心を病み施設へ、その後父も死去し、孤児院や貧民院を転々としながら新聞の売り子、床屋、パントマイムなどをしつつ糊口をしのぐような苦労をしていました。弱者に対する優しさ、しかし「サイレント映画」であるが故、セリフではなくスクリーン上の表情・背景のみで伝わる「感じられる優しさ」が本当に心に響きました。
『Modern Times』(1936)
この作品の冒頭の羊の群れのシーンで、資本主義社会で家畜化した労働者を風刺し、労働者の悲哀を痛切に、でも喜劇的に描いています。
風刺を通して社会問題を喜劇の中に描き、個人の尊厳や人間愛をうたっています。「放浪紳士チャーリー」は、強い相手の前では弱腰になる反面、誰かを守り助ける為なら不屈の精神力を発揮し、真正面から立ち向かうのです。
そして、
『独裁者』(1940)
1939年、ドイツのポーランド侵攻で第二次世界大戦が勃発した段階で、彼は、ヨーロッパで台頭するファシズムに危機感を抱き『独裁者』の脚本を書き始めたそうです。でも、撮影当時、アメリカ人はヨーロッパの戦争を「対岸の火事」として大した関心を持たず、ナチスが反共・白人優位主義であったこともあり、ヒトラー支持の人も多かったため、撮影中は様々な妨害が加えられたそうです。それでも彼は、不屈の精神を貫きこの映画を完成させました。
そして、この作品で、サイレントへのこだわりを捨て、完全トーキーを採用しました。その目的は、映画史に残る名場面となる「最後の6分間の演説」です。
(この素晴らしい演説は次の記事でご紹介します)
チャップリンがまだ幼い子供の時、食肉処理場から一頭の羊が逃げ出しまた。周りの人間は慌てて羊を追いかけるが、羊も必死、羊も人間もあちこちにぶつかり、ひっくり返り、と、ドタバタ劇が繰り広げられた。その光景を見て、周りの人間は腹を抱えて大笑いしていた中で、チャップリンはボソッと「きっと、あの羊は泣いているんだ……」とつぶやいた。
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