予備校講師のつぶやき 〜教育改革がいきる力を育む〜

地方在住の予備校講師(英・国・小論文) STARWARSが何より好き (SNOOPY、チェブラーシカは別格扱い)

"壬生義士伝" 浅田次郎

「歴史」という教科、史実だけをただ羅列したものを暗記し点数を取る、入試としては知識の量・正確さを問うわけで、それで構わないと思いはしますが。。。

「理系に進むのは、国語や歴史という教科が嫌いだから」という理系の生徒が多くいます。また、文系の生徒も、「好きではないが受験科目なので選択している」という生徒も多いのが事実です。

編年体

事実の起こった順に年月を追って記す、歴史書の書き方。

紀伝体

人物伝・列伝を中心に記す、歴史書の書き方。

 小学生の頃、うちの親が買ってくれた数少ない(笑)まんが、「まんが 日本の人物歴史伝」「まんが 世界の人物歴史伝」、これは紀伝体で日本と世界の歴史上の人物をストーリー仕立てで書いてありました。僕は、これを、本当に「穴があいて破れてテープで貼って」のレベルで読み続けていたので(他にまんががなかった、、、)、高校に入るまで、勉強はほとんどせずとも、歴史のテストはいつも高得点でした。

僕は普段の講義の中で、また、休憩時間の会話の中で、「My favorites(本・映画 )」を生徒達にふれ回っています。昨日も、二次試験の個別対策でフラフラになっている(はずの)二人の男子生徒が、そのうちの一冊を読みふけっていました。

それが壬生義士伝」(浅田次郎)です。

 

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〜あらすじ〜

 

新撰組隊士吉村貫一郎の生涯。 

幕末の南部藩足軽として盛岡で過ごし、妻と子を授かり、 文武両道を貫き足軽の身分で藩校の講師まで務めた。
その彼が、足軽であるがゆえに日々の薪木に事を欠く貧困な暮らし、妻子を食わせるために脱藩(当時、脱藩は死罪に値した)
その後、京都で、尊皇攘夷の急先鋒として権威をふるっていた新撰組に入隊。
人の嫌がる人殺しを「金のため」ひきうけ、鬼貫と恐れられても淡々と実行し、 
彼はその稼いだお金をすべて郷里の妻子に送っていた。
衣装はボロ、女遊びもしない、武士にしては優しき笑顔が何故か人を惹きつける。外見からはか弱さまで見て取れるのに、、一旦剣を抜くと、新撰組の誰もが一目おくほどの達人。それが吉村貫一郎

しかし、彼こそは、新撰組の皆が認める、いや、憧れた「男」
愛する妻子を養う、それだけがために「生き抜こうとした」、しかし、何より大事だった息子に降りかかる悲運。

「奥州列藩同盟」「函館五稜郭の戦い」「鳥羽伏見の戦い」、何故に男達は戦うのか。
貫一郎の親友「大野次郎右衛門」、「右衛門の息子」、「貫一郎の教え子」「新撰組の生き残り達」それぞれの視点で語られていく彼の生き様。

そして、幕末の騒乱を生き残った新選組最強の剣士の一人「斉藤一

彼は、貫一郎の持つその純粋さ故に、憎んでさえいた。

しかし、彼を含めて皆が言う

吉村貫一郎を死なせてはならない」

そのために皆が動く、自分の命をなげうってでも。

「何のために生きるのか」

「誰のために生きるのか」

それをはっきりと見据え、かつ、純粋にそれを貫く吉村貫一郎

 

 

 

 

 

20歳、30歳、そして40歳の今、それぞれのタイミングで僕の人生を振り返った時、登っている山の高さによって見える風景が違うように、見渡せるモノ・ヒト・自分はそれぞれ違っていました。でも、「先に見える景色」ではなく「先に見るべき景色」はより鮮明になってきた、近頃そう思います。

 

小学生・中学生・高校生を経て、大学生・社会人、そして、仕事を通じて、生徒たちも、また、すべての人間は、自分の人生を生きる、いわば、「ストーリー」を作っていいきます。

皆が皆、ドラマティックで幸せばかりの人生を送るわけではありません。皆が皆、ヒーローやヒロインになるわけでもありません。ただ、掲げた自分のビジョンを日々修正しながら、それでも必死に今日を見て、明日を見て、その先を見て、その結果が、その人の人生、つまり「ストーリー」になるんだと思います。

僕の生徒たちは、まだ10代、若い、でも彼らもこれから多くの経験をして自分のストーリを作っていくでしょう。今まで受け持った生徒たち(約1500人)は、嬉しいことに、卒業後も僕によく連絡をくれたり遊びに来たりもしてくれます。家庭を持ち、それぞれのフィールドで活躍し、また、悩みを抱えながら、僕とは違うそれぞれのストーリーを作っている、この職業をしていて本当に良かったと思えます。

皆が自分の人生、つまり、「ストーリー」を生き抜くために、様々な「本」と出会い、そして、「歴史に埋もれた市井の人々」を知る。

「歴史」の教科を学ぶ意義は、そんなとこにあるはずだ、と思っています。

 

 

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)